目を閉じて、セラピーに入ると、見えるのは日常のこまごまとした”物”が飛んでくるだけのイメージでした。バスタオル・はさみ・子供の使っている自転車・ペン。
次々と現れては目の前を通り過ぎていきます。
セラピストが他に何か見えますか?と聞きますが、自然物はあまり見えません。
最後に、普段つかっているスマホの画面とパソコンらしきデスクトップのチカチカした画面が飛んできて、私の真正面からフェードアウトしました。
何もなくなったところに、ふっと息を吐いたように小さい世界が生まれました。
そこからどんどん広がって、真っ暗から少しづつ明るくなり、降り立った場所が古代とも現代ともとれる壁面の世界になっていることに気づきました。
自分は一人の中年の女性になっていました。
私の服装は奇抜です。
小学生の上靴のようなものを履き、靴下は虹色。上下は真っ赤なスーツ姿で、髪型はポニーテールで、髪質はあまりよくなくボソボソですがまっすぐストレート。顔にはマスクを着けています…。
目は細く、あまり開きません。が見えます。
手にはゴールドの輝きを放つ大きな試験管…よく見るとペンのようなものを持っています。その試験管のようなペンは、外側はガラスで、内側は金色の金属で複雑な形と多様な働きができ、更に中に”芯”があるものでした。
私は、その金色のペンを使って壁画を描く仕事をしています。
今描いているのは、美術館の壁そのものに描く、左右上下対称な幾何学的な絵です。
仕事はまだまだかかりそうで、美術館の長い廊下は、白いキャンバスのままです。これからこの壁いっぱいに素敵な絵を描こうと思っています。
感じてくる感情は、”無”。
急ぎではないから焦らない、一人だけど寂しさはない、高揚感も責任感も特にありません。
自宅に帰り、スープを飲んで一息つきます。
自宅には私以外いませんが、ペットの猫だけはいました。
夜になり、窓の外が暗くなります。
この地域では、暗くなると、白・ピンク・ブルーのきれいな光にあたりが包まれるのです。とても幻想的できれいな色彩…この鮮やかさを感じて、改めて、自分はアーティストなのだと認識することができます。とてもいい気持ちです。
セラピストが言いました。
「おそらくこれはアバターです」
アバターとは、非現実世界で自分の意志を表現する分身のことです。
私の潜在意識が、私のなりたいものを、スマホとパソコンの画面から作り出して見せていたというのです。
金色の試験管のようなペンは、仕事や複雑な問題において技能向上する暗示を表し、壁画は表現したい気持ちを発散させている暗示のようです。
現実の、仕事や生活に追われ、芸術を楽しむ時間がないことに、少し空いた時間で非現実を楽しみたいという気持ちがアバターとなって、私の代わりに潜在意識の中をそのような形で表現してくれたようでした。
なるほど、と私は思いました。