EXPERIENCE体験談
うらなり
2024.05.23
うらなりとは、カボチャなどのウリ科の植物において、一番遅くにツルの先に実がなること。意味が似ていることから一番末に生まれた子を指すこともあります。
うらなりをばころがし育て也、という俳句があり、長子は初めての子育てもあり教え込んで育てても、末っ子は育児がおろそかになりそこらへんで転がすようにほったらかす、という意味です。末っ子で育ったある人は、長男・次男が親から習い事や塾や新しい服を与えられる一方で、自分には何も与えられず期待もされず、いてもいなくても同じ空気間で育てられたと言います。自由な一方、そのかたの野心は、親から認められたい、誰かから称賛されたいという欲求が強く、常に自分の存在を主張することにエネルギーの大半を使っておられ、いつしか何事もうまくいかなくなり疲れ果ててしまっているようでした。
目立ちたがりなんかではなく、間違いを修正させることで自分の存在を認めてもらう。その人はそういう性格なんです。おちゃらけて目立つ浅はかな人間ではなく、皆があいまいにしている悪い習慣をまっすぐ一本のやり方に変えるべく、動いてきた人生だったようです。
この方が見た前世は、アジアの大陸の、大きな草原に立つ刀を携えた武人の人生でした。
鎧は勝ちの意味の赤。
髪の毛は頭の真上で一本に縛り、眉がきりっと上に上がって、何か意を決したように草原の向こうを捉えています。これから何かが起こりそうな張り詰めた空気感です。こうなる前、この方に何があったのか、話していただくことにしました。
この方は、中国大陸の生まれで、そう貧しくない村で生まれました。
この村は、水が豊富にわき出でて農作物が収穫でき、少しの貨幣の流通があるので、市場や茶わん売りがあるなど、村人たちはそれなりに豊かな暮らしができていました。
ここで生まれ育った彼は、ある晩、妻に鏡を持たせ、全身をこの目で見て、最後の雄姿とばかりに自身の鎧姿を目に焼き付けました。そうして少しの酒を飲み、決心がついたように静かに心を整えます。
次の朝早く、彼は旅立ちます。家に妻を残し、この世を変えるべく立ち上がったのです。村人たちは、盛大に送り出してくれました。まるで祝い事かのように笑顔で、がんばって来いよと。
彼の兄弟は何年も先に旅立っており、はるか遠くから活躍の知らせが届いていました。一国の主になっただの、絶世の美女と結婚しただのと。
自分も活躍しないわけにはいかなく、この世を救うために過酷な旅に出たのです。村のため、妻のため、人々のためにです。悪い王がきつい税をとっている国があるかもしれない。水がなく飢えに苦しむ村があるかもしれない。
旅はまだまだ続きます。まだ歩いています。
馬が先にばててしまいますが、まだ、旅は、続きます。
自分のやり方がいけなかったのか、自分もばててしまいます。
彼は少し反省しました。温和な性格と平和を愛するやわなこころがいけなかったのかと。次もし生まれ変わったなら、強い心の持ち主になろう、頭の回転が速く、ムダがないように生きよう。そして次こそ、親から兄弟たちから認められる人物になろうと。
彼が思いだしたのはそういう前世だったようです。