ルーマニアの魔女 男性

体験談

降り立ったのは森の中でした。

衣服は焼けただれ、体は傷だらけ・・・悲痛な気持ちと恐怖とで混乱した感情が流れてきます。

とにかく見つからないように、夕暮れ時の薄暗い森の中を進んでいます。

追われていないか気にしながら、森の奥に見つけた小さな家の前で、立ちすくんでいます。家から出てきたのは優しそうな年配の女性でした。年配の女性・おばあさんは、私を見るなり、大変な目にあったんだね、すぐに手当てをと!私を家に招き入れてくれました。

私は女性で年齢は20歳から30歳の間、場所はルーマニア、時代は1760年代だとわかりました。

いままで私は、一人で暮らし、誰の手も借りず誰にも文句を言わせない孤高の生き方をしていました。男性に心を許すこともなく、それに困ることも不自由もありません。

ある日、街中で事件が起こります。剣を持った数人の騎士が、街中を焼き払い、人々を殺傷するという痛ましい事件です。背景はわかりませんが、教会がちらちら出ていたので、宗教的ないさかいかもしれません。

その場にいた私は、目の前の悲惨な光景にショックを受けます。自分も体に傷を負い、目の前で人が殺されるのも見ているのです。セラピー中に、体に電気が走ったような感覚がして衝撃を感じたほどです。その時抱いた感情は、男性が怖い、男性が憎い、男性は野蛮、というかなりはっきりとした嫌悪感でした。その後一人だけ助かった私は、近くの倉庫に逃げ込み、時を見計らって森に逃げ込んだのでした。

傷だらけの私に、おばあさんは、辛かったねもう大丈夫と優しく介抱してくれました。人の優しさを感じたのも、人を好きになれたのも、このおばあさんだけでした。

おばあさんは、今は隠居生活で、普段は他人に姿を見せず森の中でひっそりと暮らしています。若いころは知恵と知識と技術を持った名の知れた”魔女”だったようです。魔女といっても悪いものではなく、人の役に立つ知識や、薬を処方するといった善民の味方でした。時には儀式的なことをして、今では考えられないような本当の奇跡を起こして人々の病気を治したり、誰にでも感謝されるようなすばらしい人だったのです。

そんなおばあさんが私を救ってくれて、しかも傷がいえた後も私に知識を教えてくれたり、何かと世話をしてくれたのです。私の形見にと、きれいな金属の腕輪も授けてくれました。それはおばあさんがお気に入りだった純金の高価なもので、身につけていると不思議と気持ちが落ち着き、美しさと勇気も与えてくれました。

やがて時は経ち、おばあさんは天に召されます。

私は、おばあさんのように生きようと、丘の上に建物を作り、おばあさんから教えてもらった知識や生活の工夫を女性たちに教え始めました。生活の基盤はクリーニング業で、家々のシーツ類をまとめてきれいに洗い、こだわって仕事をしていました。女性たちに感謝され、ときにはみんな集めてお茶会などもして充実した人生を送り、時が過ぎるまま、私はいつの日か死の直前のつえを突く老人になっていました。

お迎えが来ます。

人生を振り返ります・・・

生涯独身で過ごし、女性たちの助けに身を費やした人生でした。思い残すことも、やり残したこともありません。

体から魂が抜ける瞬間、あの時のやさしいおばあさんがお迎えに来てくれます。

懐かしく、無償で際限ないおばあさんの愛を振り返り、感動の涙でいっぱいになります。

だけど、わかってしまったのです。おばあさんは、そんな私の人生に対して、それは本当の幸せなのかと問うのです・・・わたしが、今世、男性に生まれてきたこと。

わたしが今世、何をなすべきなのか、おばあさんは今まさに私に問いかけたのです。

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