EXPERIENCE体験談

会話の受け取り方

前世療法

2023.02.08

気持ち・意見などを、言葉などを通じて相手に伝えること。通じ合い。それがコミュニケーションだと言われていますが、今回来られたクライエントは、職場の方とのことで、スムーズに会話ができないことで悩んでおられました。

  詳しくお伺いすると、会話になると相手が荒々しい態度に出たり無視をしたりするので、業務が進まず仕事に影響があるということでした。もちろん精神的にもストレスがかかり普通ではいられません。それでもクライエントは自分の感情を抑え、平常心でいることの努力を続けたそうです。

カウンセリングでは、職場の方に、その態度をやめてもらうように伝えることは、自分の中では人間関係に波風を立たせることであって、平和的な解決を望む自分にはその選択肢はないと言います。

平和的解決は何かというと、自分が変わることだとおっしゃいます。自分が変わらなければいけないことを感じていた、とすると、自分に原因があることが頭の片隅にあったということなのだと私は理解しました。

クライエントの望む通り、クライエントが変わることへの手助けのためにセラピーが行われることになりました。

一回のセラピーで、二つの場面が出てきました。一つは、1900年代・青森県の田畑を耕す人たちのシーンです。

広大な土地にのどかな田園風景、その中の小さな木だけでできた家の中には、老夫婦が住んでいました。

老夫婦は、黒い長靴、ジーンズのオーバーオールに麦わら帽子をかぶっていて、高齢なのにまだまだ現役で畑づくりをしています。奥さんも同じくです。

  クライエントの方は、ケミカルウォッシュのジーンズ生地の長袖に黒いチノパン、麦わら帽子のいで立ちで、老夫婦の手伝いに来ている最中でした。

  この3人の関係は血族ではありません。でも小さいころからこの老夫婦に世話をしてもらった恩があって、青年になった今はクライエントが老夫婦の手伝いを惜しまずにいるのです。

世話をしてもらったから、今度は自分が手伝いをする。

この老夫婦に感謝の気持ちがあふれている心温まるシーンです。

次に出たのは、きれいな砂浜と郷愁にかられる気持ちです。  

砂浜では、家族が海の中に入ってはしゃいでいます。他にカップルもいます。カップルも、浮き輪で押し合って楽しそう。クライエントは一人で体育座りをしてその光景を眺めています。  

気持ちは?と聞くと、「すごく楽しいです。なつかしいです」

なにが楽しいですか?「海に来ているのが。」

どう楽しいですか?「はしゃいでいる家族とか、カップルを見るのが」

あなたは楽しんでいますか?「はい、自分は一人で見ているのが楽しいです」

クライエントは、同時に、小学生のころの、海でお父さんとサッカーをして遊んだ記憶も蘇ってきていました。今の現実が薄れるくらい、あの時の愛されていた、安心した時代を心から心地よく思い出しています。人の感じ方に色々あるけど、気持ちいいとか楽しいとか、だけど自分は”懐かしい”という感じが一番好きです、幸せを思い出すんです、と言います。  

なつかしさの中に、確かな幸せが感じられたあの時代が、クライエントの中で一番の大切な時間だったのでしょう。  

家族。優しいお母さんと、遊んでくれるお父さん。家族の愛情はこの時、全て自分に向かっていた。  

では、今、一人で海を見ているこの時間の意味は。

他の人はクライエントのように一人ではなく、

家族・恋人といる。  

あなたは。

「はしゃいでいる家族やカップルを見ると、自分も楽しく感じます。幸せがそこにあるんだなと。

幸せを感じる人たちを見て、自分がまさに幸せだったことを、思い出すからです。私は確かに、幸せでした」

自分が、昔のように幸せになりたいとは思わないのですか?

「…なつかしさが心地よいです」

過去に受けた人対人のストレスから逃れるために、自分ができうる対抗策が、一人でいること。それがストレスへの防衛手段であっただけであって、あなたは、本来は、人と人とで築く幸せがどんなに素晴らしいものかを理解しているのですね。

クライエントにとって、一人とは、防衛手段。

このイメージは、今遠目に見ている砂浜の向こうの、幸せに見える家族・カップルと同じく、自身も幸せを感じ受け取ることで、自分自身も彼らと同じになれるということを示している、ということは…

あなたも同じく、他の人と共に幸せを築いて行けるということなんでしょうね。  

たとえば、彼女を作るとか。  

「はい、最初に見た老夫婦の場面ですけど、幼少期のころ、あの人たちからとてつもない愛情を受け取りまっとうに成人することができました。あの時のご恩は、忘れません。そして、あの時、そのご恩を返すべく、老夫婦を、本当の肉親よりも自分が肉親であるかのように、最期まで本当の最後までお世話させていただきました。受け取った幸せを返したのです。」

受けって、返したのですね。

幸せを受け取る、幸せを返す、その先に、クライエントが知らなかった世界が待っているのだと思います。    

あとがき

クライエントにだけわかるように書いていますが、この方の悩みが会話がうまくできないということについてのセラピーをしたところ、出てきたイメージの意味は、”受け取って返す”場面が出ていますという意味でした。これは、会話のキャッチボールと同じで、相手の話を最後まで聞いてからそこにきちんと反応する。次に、自分の話を返して、相手の反応を受け取る、というような、できているようでできていない人が実は多いという話でした。